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【伊賀タウン情報YOU】
廃医院が“乱歩ワールド”に 生誕地ミュージアムが名張に開館 民間で実現

三重県名張市生まれの作家、江戸川乱歩(1894‐1965)の文学世界を体感できる「江戸川乱歩生誕地ミュージアム」が11月3日、同市新町にオープンし、乱歩の生家跡に建つ廃医院に再び明かりがともった。行政ではなく、民間の力によって乱歩と名張の物語がまた動き出した。

市内で紅茶専門店を営む辻孝信さん(65)は、曾祖母せきさんの手記=YOU839号=をきっかけに、乱歩との深い縁を感じるようになった。2016年に廃院した旧桝田医院の売却を昨年知り、今年2月に約700平方メートルの敷地に建つ元医院と元院長宅を購入。「乱歩の世界観を体感できるミュージアムを作ろう」と構想し、目標500万円でクラウドファンディングを開始したところ、全国のファンが心を動かされた。最終的に38都道府県から約1300万円の支援が寄せられた。

長年放置されていた元医院は、雨漏りやごみの散乱など、問題が山積していた。辻さんは、市内在住で日本推理作家協会会員の秋永正人さん(67)、リフォーム業などを営む副島翔伍さん(36)と力を合わせ、約3か月かけて整備を進めた。

生まれ変わった建物内には、乱歩の怪奇と幻想の世界を映す部屋が並ぶ。診察室は、初期作「赤い部屋」をモチーフにした空間に姿を変えた。異常な興奮を求めて集った男7人のうち1人が連続殺人を告白する話で、室内は天井から床まで赤で統一。壁などには不思議な文様が浮かび上がる。

X線室と電気治療室は、名探偵・明智小五郎をテーマにした部屋に改装。乱歩研究家の監修のもと、明智の衣装やたばこなどが展示され、奥の部屋では1955年11月3日の生誕地碑除幕式のカラー映像(立教大所蔵)を映す。院内にあった古いレコードも活用し、独特な音で雰囲気を高める。

手術室には古い医療器具が並び、生誕地碑を望める元院長宅の2階は、乱歩ファンが語り合うサロンに生まれ変わった。和室では、地元のファングループ「幻影嬢」による「D坂の殺人事件」の再現展示も当面の間、楽しめる。

乱歩は生後間もなく名張を離れたが、50代後半で初めて故郷を巡った。乱歩の帰郷をきっかけに、地元有志が資金を出し合って70年前に建立した生誕地碑と同じように、生誕地ミュージアムも人々の情熱によって実現した。辻さんは「皆さんの支援でここまで来られたことが、何よりうれしい。全国の方に乱歩と名張のつながりを知ってもらい、街の活性化につなげたい」と語る。読書会やマルシェなど、今後の構想も膨らませている。

見学は予約制。協力金による支援を受け付けている。
予約、問い合わせは公式ホームページ(https://rampotonabari.wixsite.com/home)から。

【YOU公式インスタグラムのリール動画「江戸川乱歩生誕地ミュージアム」(https://www.instagram.com/reel/DQkm1XCEswp/?igsh=MWkzdnZoNmtsY3k5eA==)】

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伊賀タウン情報YOU記事より

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