人権文化のまちづくり

名張市人権センター
Nabari City Human Rights Center

ハンセン病問題学んで 来月10日「市民学会」の訓覇さん講演 コロナ差別と共通点/名張

 ハンセン病回復者や支援者らでつくる「ハンセン病市民学会」(大阪市)の共同代表・事務局長で、菰野町の真宗大谷派金蔵寺の住職、訓覇くるべ浩さんが、患者・回復者などへの差別・偏見解消に向けた道のりを語る講演会が6月10日午後2時半から、名張市鴻之台1の市防災センターで開かれる。新型コロナウイルス流行下での差別問題と重なるハンセン病問題を学ぶ機会として、市などが聴講を呼びかけている。
 市や教員、地域団体などでつくる、名張市人権・同和教育推進協議会(事務局・市人権・男女共同参画推進室)が企画した。訓覇さんは、ハンセン病患者らへの国の強制隔離政策の原因や、隔離被害の実態を科学・歴史的に究明した第三者機関「ハンセン病問題に関する検証会議」(2005年に最終報告)のメンバー。05年に発足した市民学会の発起人の一人でもあり、23年3月末までの国の「ハンセン病に係る偏見差別の解消のための施策検討会」では当事者市民部会委員長を務めた。
 ハンセン病補償法の施行日(01年6月22日)にちなむ「名誉回復及び追悼の日」を前にした講演会。市は「自分にもかかわる問題として聞いてほしい」としている。入場無料、申込み不用。問い合わせは名張市人権・男女共同参画推進室(0595・63・7909)

     自分事として受け止めて
 ハンセン病は、らい菌による感染症で、手足などの末梢神経の麻痺などが起きる。感染力は弱く、日本では戦後間もなく特効薬での治療が始まり、完治する病気になったが、国の強制隔離政策は1996年の「らい予防法廃止」までの約90年間続いた。家族にも及んだ偏見、差別は根深く、その後も全国13ヵ所国立療養所などで暮らす回復者は多い。
 回復者や支援者らが体験や歴史を語り継ぐ活動は広がり、小中高生なども療養所を訪ねて学び、交流してきた。三重県には療養所はないが、国の強制隔離政策で地域から患者を排除した「無らい県運動」を進めた歴史がある。療養所で暮らす回復者からは「療養所がある土地だけがハンセン病問題に関わるのではない。かつて患者を排斥した土地だからこそ、学んでほしい」との願いも語られてきた。
 名張市の同協議会は2021、22年度、研究会のテーマを「感染症と人権~過去の教訓を後世にいかすために」と設定。コロナ禍で患者や家族、医療従事者らへの差別的な発言などが生じる中で、病気に対する正しい知識を持ち、考えようと、新型コロナとハンセン病、HIV(エイズウイルス)の問題を学んだ。
 「人間性を回復しなければならないのは私たちでしょうか。本当に人間性を回復しなければならないのは、隔離し偏見と差別をしてきた人たちではないでしょうか」。協議会に参加した同室の鴨志田知子さん(47)は回復者の言葉を読み、問題が突きつけられた。「ハンセン病」の名を聞いたことはあっても、コロナ下での差別に通じる問題だと確認。「訓覇さんの講演で、さらに学びたい」と感じている。
 研究会は、新型コロナやハンセン病などの問題を扱ったパンフレットを作成した。市役所や市民センターで配る予定。

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