<性同一性障害>保険証、「通称名」容認・・・健保組合(毎日新聞より)

心と体の性が一致しない性同一性障害(GID)と診断され、戸籍上は男性だが女性として生活している京都市の50代の会社経営者について、京都府酒販国民健康保険組合が、保険証に通称の女性名を記載することを認めていたことが6日、分かった。支援団体によると、公的な身分証明書にもなる保険証で通称使用が認められるのは極めて珍しい。経営者は「私たちがストレスなく社会生活を営むうえで大きな前進」と話している。

経営者は2012年にGIDと診断され、14年春に性別適合手術を受けた。ホルモン治療を受け、化粧をするなど普段から女性として暮らしている。子どもがいるため、戸籍上の氏名は日常生活への影響を考えて変更していない。

このため、医療機関で受診すると男性名で呼ばれたり、「他人の保険証は使えない」と言われたりした。人間ドックでは男性用の更衣室に案内され、心理的ストレスを抱え続けてきた。

経営者は15年8月、加入する府酒販国民健康保険組合に女性名への変更を相談。組合が厚生労働省に照会したところ、「保険者(=組合)の判断で氏名表記して差し支えない」との回答を得たため、16年8月、女性名に変更した。

GIDの人たちが保険証に表記する性別を巡っては、厚労省が12年、戸籍上の性別を裏面に記載すれば、表面は「裏面参照」と記載してもいいとの判断を示した。

だが氏名についての規定がなく、これまで経営者の保険証には住民基本台帳に基づいて男性名が記載されていた。今回の女性名表記について、厚労省は「性同一性障害を持つ人々に配慮できる方法を内部で検討し、(組合に)回答した」としている。

氏名変更は家庭裁判所の許可を得て戸籍を変えれば可能だ。だが今回の経営者のように、さまざまな事情を抱えているため手続きを取らず、通称を使っているGIDの人たちも多いとみられる。【岡崎英遠】

◇大きなメリット

GIDの当事者らで作る一般社団法人「日本性同一性障害と共に生きる人々の会」のメンバーで臨床心理士の西野明樹さん(30)の話 これまで保険証の氏名は改名しない限り、変更できないという認識だった。適合手術を受けていないGIDの人にとっても、大きなメリットになるのではないか。