児童養護施設:後輩へ「大学に行っていいんだよ」 施設から県内初の進学 夢は看護師、施設員が全力応援/和歌山(毎日新聞より)

 児童養護施設に入所する高校生の大学・短大・専門学校進学率は12.3%で、全国平均の53%を大きく下回っている(2011年厚生労働省調査)。そんな中、田辺市内の施設の女性(19)が昨年4月、県立医大保健看護学部(和歌山市紀三井寺)に入学した。入所者が大学進学したのは県内で初めてだ。女性は今年4月から、施設を出て和歌山市内に1人暮らしを始める。「施設の子どもでも大学に行っていいんだということを、後輩たちに伝えたい」と話している。【高橋祐貴】

 女性は4人家族の次女として生まれたが、間もなく両親は離婚し、父と姉とは別居。その後、母が精神疾患を患ったため、2歳の時に田辺市城山台5の児童養護施設「ひまわり寮」に入所した。

 中学1年生の時、施設が増改築され、4〜6人部屋から1人部屋となった。自然と自分の生い立ちと向き合うようになり、親元に帰れる状況でないことも自覚するようになった。将来について施設員と相談することも増えた。施設を出た先輩が何度も職を変えて生活に苦しむ話も聞き、「安定して働けて、母のような病に苦しむ人々を救いたい」と看護師の道を意識しだした。「学歴が良ければ、より環境の良い職場で働ける」と思い、大学進学を志した。

 すぐに行動に移った。「塾に通わせてほしい」と施設員に相談。タイミングよく、施設の中学生を対象に学習塾費が補助されるようになった。さらに施設員が、退職した教師をボランティアとして招いてくれ週2回教えを受けることになった。

 県立田辺高校に進学後は、将来の生活費をためるため、白浜町の旅館で清掃のアルバイトを始めた。「アルバイトで体力は削られ、友だちともなかなか遊べなくてつらかった」という思いを抱きながらも、施設員の全面的な応援を受け、目標に向けて突き進んだ。

 2013年11月、高校での推薦枠を見事勝ち取った。「喜びよりも、ほっとした」。担任から合格の知らせを受けた時の気持ちをこう振り返る。

 大学に入学して間もなく1年。和歌山市と田辺市は通学に2時間半かかり、帰宅時間は日付をまたぐこともある。勉強にも力をいれたいし、貯金するためにアルバイトもしたい。そこで施設を出ることを決めた。

 「夏休みには戻っておいで」と施設員から声をかけられている。「私にも帰れる場所があるんだ」という安心感を胸に「患者さんの心のよりどころになれる看護師を目指したい」と前を見据える。