名張版ネウボラの今/下 寄り添い、ママの孤立救う 「保健室」核に専門的支援 /三重/毎日jp

  妊娠、出産、育児の切れ目のない子育て支援事業「名張版ネウボラ」では、多くの新規施策が導入された。これが新たな人材を育て、ネウボラをより手厚いものにしている。【竹内之浩】

 ■身近な相談窓口

 ネウボラの核は、2014年度から市内15カ所の「まちの保健室」に2〜3人ずつ置く「チャイルドパートナー(CP)」。看護師や保健師らの有資格者が、妊娠中から出産後までの悩みや育児相談に乗る。身近な場所でささいな事柄も聞ける敷居の低さが特徴だ。15年度は面接数675件(14年度178件)と大幅に増えた。

 「頑張ってよく来たね」。「鴻之台・希央台まちの保健室」のCP・水口登志子さん(40)は来所者にそう声を掛ける。CPになったのは今年4月。以前は利用者として何度もここを訪れた。切羽詰まって駆け込んだ時、さりげなく自分の頑張りを認めてくれた一言に救われた。だから自分もその言葉から相談を始める。

  ■心を折らせない

 苦しんだのは、水口さんが長女を出産した4年前の秋。3人目だったが、初の女児だったことや妊娠のために退職して収入が減ったことなどで不安が募り、泣きながら保健室で悩みを訴えた。ネウボラ導入前だったが、今は同僚CPとなった三永拡子さん(41)が傾聴し、解決に向けて考えを引き出してくれた。「自分で対策を考え出せた。こんな力がまだあったんだと自信がついた」と振り返る。

 CPの欠員ができ、三永さんが「苦しんだ経験を生かして」と水口さんを誘った。相談では自身が経験したように相手の頑張りを認め、力を引き出すことを心掛ける。現在4カ月の長男と訪れる近くのパート従業員、丸山れなさん(29)は「いつも『分かるよ』と言ってくれて、うれしかった。その言葉がなければ、心が折れていたかも」と話す。

 相談以外にも子育て広場の支援や地域行事での母子の見守りなどCPの仕事は幅広い。「悩み、孤立しているお母さんを減らしたい」と2人は声をそろえた。

 ■産後ケアに注力

 CPの配置と並び、新規施策の目玉が乳腺炎予防や母乳相談などの産後ケアだ。14年度の調査でも最も要望が多く、関連の4事業に15年度は950組が参加した。この事業に不可欠なのは助産師だが、それまでゼロだった名張で昨秋2人が開業した。その一人が「母子支援室みかん」を運営する本間光代さん(59)だ。

 3年前から助産師として産科医院に勤めていた本間さんが開業したのは昨年9月。市が1回5000円を負担する乳腺炎予防ケア事業の受け入れ先として、開業の要請があった。以来、月に延べ10人余りに対応。当初は訪問だけだったが、7月から施設も開いた。

 4月からは、市が育児に疲れた母親に休憩を取ってもらうため、赤目保育所で週1回開く「産後ママゆったりスペース」で健康・育児相談に乗る。「子育ては大変だけど幸せ。そんなふうに思ってくれたらうれしい」と本間さんは語る。

 本間さんにケアを受けたのを機に「ゆったりスペース」にも訪れるようになった同市つつじが丘の主婦、小西州子さん(30)は「元看護師ですが、育児の知識は多くないので細かい助言が聞けて心強い」と喜ぶ。

 ■救済へ連携強化

 高齢者向けだったまちの保健室がネウボラの窓口になったことで高齢者福祉と母子保健、子育て支援がつながり、地域の活動も連動し、大きなネットワークができた。産科医の連絡で切迫した危険を抱えた妊婦を市が緊急支援した例もあった。「身近な寄り添いの中で、どこに相談しても誰かが拾い上げ、専門的支援につなげる態勢ができてきた」と市健康・子育て支援室の上田紀子さん(39)。こうしたネットワークを通じて届いた情報を基に、市や専門機関が行った訪問支援は15年度で759件(14年度580件)を数える。

 市は11月から子育てや障害者、生活困窮など多様な問題に関し、1カ所で相談できる「地域福祉教育総合支援システム」を開始する。亀井利克市長は「共生社会実現へ集大成の施策。ネウボラや健康づくりなどで培った地域の力を得て、成功させたい」と力を込めた。