名張版ネウボラの今/上 「子育て」が地域をつなぐ 包括支援、高齢者も参加 /三重/毎日jp

名張市がフィンランドの育児相談所「ネウボラ」を参考に、2014年夏から本格的に導入した妊娠、出産、育児の切れ目のない子育て支援事業「名張版ネウボラ」。国が昨年度から設置を進める「子育て世代包括支援センター」の先駆例として紹介され、これまでに市外から約150の自治体や団体が視察に訪れた。少子化対策の柱として取り組んで2年余り。成果と新たな動きを調べた。【竹内之浩】

   ネウボラ導入前、市は妊娠届を受けた後、生後1〜3カ月に主任児童委員が行う全戸訪問まで妊産婦と関わる機会がなかった。そこで新規施策を中心に、支援の空白期間だった妊娠中と産後のケアを強化した。だが、健康・子育て支援室の保健師、上田紀子さん(39)は「ネウボラは時期の切れ目をつなぐだけでなく、人と人、人と地域をつなぐ試み」と指摘する。

 ■初の託児サービス

 母親の姿が見えなくなった途端に泣き出した子どもを、笑顔の女性が根気よくあやす。美旗市民センターで第4水曜に開かれる託児支援「みはたすくすく」。美旗まちづくり協議会福祉部が昨年11月から始めた。地域づくり組織の託児は市内で初。託児は午前9時〜正午、1回100円。利用理由は一切聞かれない。

 「家で寝ていてもいいんです。地元のママがひと息つく時間を作りたい」と福祉部長の中森かよ子さん(62)は話す。だが当初、協議会内の反応は厳しかった。事故時の責任を巡って慎重な意見が相次いだ。「でもそれは当たり前。先の先まで考えないといけないと勉強できた」と中森さん。安全な態勢作りのため、昨年6月に国の資格「子育て支援員」の研修を受け、乳幼児の心理や心肺蘇生などを学んだ。協議会の意見を考慮し、現在は市の監督指導の下、「試行」の形で取り組む。

 ■ひと息つく場を

 子ども1人をボランティア2人で担当する。メンバーの奥田真智さん(69)は「安全に気を使うから終わったらぐったり。でもお母さんが気分転換できた姿を見るとうれしい」と話す。先月、次男(3)を預けた小倉恵美さん(34)は「買い物がはかどりました。利用は3回目。気軽に頼めて便利」と感謝した。

 定員の3人を超えたため、託児を断った月も。ボランティアも当初の12人から30〜70代の16人に増えた。1月から始めた佐藤芳子さん(75)は昨秋の夫との死別を機に参加。「毎日、家の中で泣いていた。でも今は生きがいができた」と語る。

 市は「十分安全を確保できるレベル」と評価。中森さんも「ボランティアを増やし月2回、5人の託児を実現したい」と次の段階を見据えている。

 ■小規模サロンも

 20畳の和室で遊ぶ子どもらの傍らで、母親やボランティアがコーヒーを手に話を弾ませる。つつじが丘地区の集会所で第2、4金曜にある「きになるサロン」。こじんまりした空間と少人数の集まりが最大の特徴だ。

 地元自治協議会からサロンの運営を任されている子育て支援ボランティア「おじゃまる広場」は月2〜3回、別に約40組の親子が交流する「子育て広場」も開く。だが、代表の草部豊美さん(50)によると、100人近い人数になじめず、来なくなる人もいるという。

 そんな人のため、昨年1月に開いたのがこのサロンだ。参加者が10組を超えることはめったにない。2歳の長女と開設当初から通う井上友海さん(34)は以前、子育て広場に1日体験で参加したが、人見知りする性格で人の輪に入れなかった。「ここは参加者の距離が近いので自然と話ができる。サロンを離れても付き合えるママ友もできた」と語り、今春から運営のボランティアも務めている。

 ■独自の取り組み次々

 他にも、赤目地区の地域づくり組織が赤ちゃんの誕生祝いにベビー服を贈ったり、複数の子育て広場が高齢者施設と交流したりと、各地で新たな取り組みが生まれている。高齢者の生きがいや健康づくりにも効果を上げながら、地域独自の発想で広がる子育て支援の輪が、ネウボラの浸透を示している。

〔伊賀版〕