自治基本条例

名張市自治基本条例

平成17年6月27日条例第13号

名張市自治基本条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第3条)

第2章 市民(第4条・第5条)

第3章 市議会(第6条―第8条)

第4章 市長等(第9条・第10条)

第5章 情報共有(第11条―第15条)

第6章 市政運営(第16条―第27条)

第7章 参画及び協働

第1節 市政への市民参画(第28条―第32条)

第2節 コミュニティと市民公益活動(第33条―第35条)

第3節 協働のまちづくり(第36条)

第8章 最高規範性(第37条)

第9章 国、三重県及び他の地方自治体との関係(第38条・第39条)

第10章 補則(第40条)

附則

わたしたちのまちの自治は、主権者である市民が自らの責任に基づいて決定し、主体的に行動することにより進めなければなりません。また、自治体としての名張市には、市民の信託にこたえ、現在及び将来の市民が安心して暮らすことのできる、豊かな地域社会を市民と協働して実現していく責務があります。

このためには、自治の主体である市民、市議会及び市の果たすべき役割や責務、市政運営の原則など、自治体としての基本的な枠組みを明らかにするとともに、市政への市民参画や協働の仕組みを定めておくことが必要です。

名張市は、万葉ゆかりの歴史と文化、赤目四十八滝や香落渓など水と緑の自然環境に恵まれたまちです。これらの財産を守り育て、次代に引き継ぐとともに、名張らしさを生かした個性的で持続可能なまちを創造する取組を進めていかなければなりません。また、市内は古いまち並みや農村集落、新しい市街地が分散するなど、それぞれ特徴ある地域で構成されており、こうした各地域の特性を生かした個性ある地域づくりを市民が主役となって行っていくことも大切です。

わたしたちは、自己決定と自己責任のもと参画し、協働することを基本に、英知と力を結集することで、魅力的で誇りの持てる「自治のまち」を実現することをめざし、ここに名張市自治基本条例を制定します。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、名張市における自治の基本理念と主権者である市民の権利を明らかにするとともに、市民、市議会及び市の果たすべき役割や市政運営の仕組みを定めることにより、地方自治の本旨に基づく自治を実現し、自立した地域社会を創造することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 市民 市内で住む者、働く者若しくは学ぶ者、市内に事業所を置く事業者又は市内で活動する団体をいう。

(2) 参画 政策の立案から実施、評価に至る各段階において、市民が主体的に参加し、意思形成に関わることをいう。

(3) 協働 市民、市議会及び市がそれぞれの果たすべき責任と役割を認識し、相互に協力して行動することをいう。

(自治の原則)

第3条 市の自治は、次に掲げることを原則として推進するものとする。

(1) 人権尊重 国籍や性別、年齢等にかかわらず、市民一人ひとりの人権が保障され、その個性や能力がまちづくりに生かされること。

(2) 情報共有 市民、市議会及び市が互いに情報を共有すること。

(3) 参画及び協働 市民の自主的な市政への参画が保障されるとともに、市民、市議会及び市が協働して公共的課題の解決に当たること。

第2章 市民

(市民の権利)

第4条 市民は、市政に関する情報を知る権利及び市政に参画する権利を有する。

2 市民は、市が提供する行政サービスを受けることができる。

(市民の役割と責務)

第5条 市民は、自治の主体者であることを自覚し、積極的にまちづくりに参画するよう努めるものとし、参画に当たっては、自らの発言と行動に責任を持たなければならない。

2 市民は、諸活動を行うに当たっては、公共の福祉の増進に努めるとともに、地域の発展と環境の保全に配慮しなければならない。

3 市民は、行政サービスに伴う負担を分任しなければならない。

第3章 市議会

(議会の役割、権限等)

第6条 市議会は、市の意思決定機関であるとともに、市政の運営を監視し、けん制する機能を果たすものとする。

2 市議会は、地方自治法(昭和22年法律第67号)の定めるところにより、条例の制定改廃、予算の決定、決算の認定等を議決するほか、市政に係る基本的な事項で別に条例で定めるものを議決する。

(議会の責務)

第7条 市議会は、市民との情報共有を図り、開かれた議会運営に努めなければならない。

2 市議会は、市政を調査し、条例議案を提出するなど政策形成機能の強化とその活用に努めなければならない。

(議員の責務)

第8条 市議会議員は、市民の信託にこたえ、自己の研さんに努めるとともに、誠実に職務を遂行しなければならない。

第4章 市長等

(市長の役割と責務)

第9条 市長は、市を統轄するとともに、市の事務を管理し、これを執行する。

2 市長は、市民の信託にこたえ、公正かつ誠実に市政運営に当たるとともに、毎年度、市政運営の方針を定め、その達成状況を市民及び市議会に説明しなければならない。

(職員の役割と責務)

第10条 市の職員は、全体の奉仕者として、公正、誠実かつ効率的に職務を遂行しなければならない。

2 市の職員は、職務に必要な知識、技能等の向上に努めなければならない。

第5章 情報共有

(情報共有)

第11条 市は、市政に関する情報を、広報紙等を通じて積極的に提供するとともに、市民意向の把握など情報収集を図り、市民との情報共有に努めなければならない。

(情報公開)

第12条 市は、市民の知る権利を保障し、公正で開かれた市政を推進するため、別に条例で定めるところにより、市政に関する情報を原則として公開しなければならない。

(個人情報保護)

第13条 市は、市民の基本的人権を守るため、別に条例で定めるところにより、個人情報の保護を厳正に行うとともに、自己に係る個人情報の開示、訂正等を請求する市民の権利に対して適切な措置を講じなければならない。

(説明責任)

第14条 市は、政策の立案から実施、評価に至るまで、その経過や内容、目標の達成状況等を市民に分かりやすく説明しなければならない。

(要望等への対応)

第15条 市は、市民からの要望、意見、提案等に対して迅速かつ誠実に対応するとともに、その結果を速やかに回答しなければならない。

2 市は、市民から寄せられた苦情について、その内容や原因を調査分析し、業務の改善を行うなど適切な措置を講じなければならない。

第6章 市政運営

(総合計画)

第16条 市は、総合的な市政運営の指針として、基本構想及びこれに基づく基本計画(以下「総合計画」という。)を市議会の議決を経て定め、計画的な市政運営に努めなければならない。

(組織)

第17条 市は、社会情勢に対応する簡素で機能的な組織により市政を運営するとともに、組織を市民に分かりやすいものにしなければならない。

(人事政策)

第18条 市は、職員と組織の能力が最大限に発揮できるよう、有能な職員の任用、効果的な人材育成、適正な人事評価及び配置に努めなければならない。

(法務政策)

第19条 市は、市民ニーズや地域課題に対応するため、自ら責任をもって法令を解釈し、条例規則等の整備や体系化を進めるなど積極的な法務行政を推進しなければならない。

(法令遵守と公益通報)

第20条 市は、市政を常に適法かつ公正に運営しなければならない。

2 市は、市政運営上の違法行為又は公益の損失を防止するため、職員の公益通報に関する仕組みを定めなければならない。

(行政手続)

第21条 市は、行政処分等における公正の確保と透明性の向上を図り、市民の権利利益を保護するため、その手続に関する基本的な事項を定めなければならない。

(地域経営の原則)

第22条 市は、個性豊かで持続可能な地域社会を実現するため、地域資源を最大限活用し、選択と集中を基本とする戦略的な施策展開を図らなければならない。

(事務事業の実施等における原則)

第23条 市は、提供する行政サービスの具体的な内容や水準等をあらかじめ市民に明らかにし、公平、公正で効率的なサービス提供に努めなければならない。

2 市は、実施しようとする事務事業について、最少の経費で最大の効果をあげるよう費用対効果を検証し、明確な目標を設定して事業推進に努めなければならない。

3 市は、事務事業の実施に当たっては、環境負荷の低減に率先して努めなければならない。

(財政等)

第24条 市は、総合計画を実現するための財政計画を定め、財源を効果的かつ効率的に活用することで、自主的、自律的で健全な財政運営に努めなければならない。

2 市は、保有する財産の適正な管理及び効果的な活用に努めなければならない。

3 市は、財政状況及び財産の保有状況など市の経営状況に関する資料を作成し、市民に分かりやすく公表しなければならない。

(行政評価)

第25条 市は、効果的で効率的な市政運営と総合計画の進行管理を行うため、行政評価を実施し、その結果を施策の見直し、組織の改善等に速やかに反映しなければならない。

(監査)

第26条 監査委員は、市の財務等に係る監査を行うに当たり、事務事業の適法性のほか、有効性及び効率性の評価を踏まえた監査を行わなければならない。

(危機管理)

第27条 市は、市民、関係機関及び他の自治体との協力、連携により、不測の事態に備える総合的かつ機動的な危機管理の体制の確立に努めなければならない。

第7章 参画及び協働

第1節 市政への市民参画

(政策形成及び実施過程への参画)

第28条 市は、市民の政策形成及び実施過程への参画を保障するため、市民生活に大きな影響を及ぼす計画の策定、条例の制定改廃又は施策を実施しようとするときは、市民に情報を提供し、意見を求めなければならない。ただし、緊急を要する場合はこの限りでない。

2 市民に意見を求めるときは、パブリックコメントやアンケート調査の実施、公聴会の開催など適切な方法を選択するとともに、原則として提示された意見に回答し、公表しなければならない。

(評価等への参画)

第29条 市は、市民の市政に対する監視機能を確保するため、行政評価の結果を市民に分かりやすく公表し、意見を求めるとともに、財務及び事務事業の執行について市民が考査できる機会を設けなければならない。

(審議会等)

第30条 市は、市が設置する審議会等の委員を選任する場合は、中立性の保持に配慮するとともに、原則としてその一部を市民から公募しなければならない。

2 審議会等の会議及び会議録は、原則として公開しなければならない。

(住民投票)

第31条 市長は、市政に係る重要事項について、広く住民の意思を確認する必要があると認めるときは、住民投票を実施することができる。

2 住民投票に付すことができる事項、投票者の資格要件その他住民投票の発議及び請求並びに実施に関して必要な事項は、次条に定めるもののほか、別に条例で定める。

3 市民、市議会及び市長は、住民投票の結果を尊重しなければならない。

(住民投票の発議及び請求)

第32条 永住外国人を含む18歳以上の住民は、市政に係る重要事項について、その総数の50分の1以上の者の連署をもって、市長に住民投票を請求することができる。

2 市長は、前項の請求があったときは、意見を付けてこれを市議会に付議しなければならない。

3 市議会議員は、市政に係る重要事項について、議員定数の12分の1以上の賛成(発議者を含む。)を得て、住民投票の実施について発議することができる。

4 市長は、前2項の場合において、市議会が出席議員の過半数の賛成により議決したときは、住民投票を実施しなければならない。

5 市長は、第1項の請求に係る署名者数が永住外国人を含む18歳以上の住民総数の4分の1を超えたときは、第2項の規定によることなく、住民投票を実施しなければならない。

第2節 コミュニティと市民公益活動

(コミュニティ活動)

第33条 市民は、地域のなかで安心して暮らし続けることができるよう、自主的に区、自治会等の基礎的なコミュニティの活動に参加し、交流しながら、相互に助け合うとともに、地域課題の解決に向けて協力して行動するものとする。

2 市は、区、自治会等の果たす役割を尊重し、その活動を振興するために必要な施策を講じなければならない。

(地域づくり)

第34条 市民は、個性的で心豊かな地域をつくるため、一定のまとまりのある地域においてコミュニティ活動を行う組織として、別に条例で定めるところにより、地域づくり組織を設置することができる。

2 地域づくり組織は、当該地域の市民に開かれたものとし、市及びその他の組織と連携しながら地域づくりを行うものとする。

3 市は、地域づくりの活動に対して必要な支援を行うことができる。

4 市は、各種計画の策定や政策形成に当たっては、地域づくり組織の自主性及び自立性に配慮するとともに、その意思を可能な限り反映しなければならない。

5 市は、地域づくり組織の意向により、事務事業の一部を当該組織に委ねることができる。この場合において、市は、その実施に係る経費等について必要な措置を講じなければならない。

(市民公益活動)

第35条 市は、自発的かつ自主的に行われる非営利の活動で、不特定かつ多数の利益の増進に寄与することを目的とする市民公益活動を尊重するとともに、別に条例で定めるところにより、その活動を促進するための適切な措置を講じなければならない。

第3節 協働のまちづくり

第36条 市民(コミュニティ活動や市民公益活動を行う団体を含む。以下この条において「多様な主体」という。)及び市議会並びに市は、それぞれの特性を理解し、互いに尊重し合い、協働してまちづくりに取り組むものとする。

2 市は、公共的課題の解決や公共的サービスの提供等について、多様な主体がその担い手となれるよう、適切な措置を講じなければならない。

3 市は、協働のまちづくりを進めるに当たり、多様な主体が情報や意見を交換し、相互調整や民主的な意思形成が図られるよう、開かれた場と機会の創設に努めなければならない。

第8章 最高規範性

第37条 この条例は、名張市の自治の推進における最高規範であり、市は、他の条例等の制定改廃に当たっては、この条例を尊重し、整合を図らなければならない。

第9章 国、三重県及び他の地方自治体との関係

(国及び三重県との関係)

第38条 市は、国及び三重県と対等の立場にたち、自治の発展のため、協力して適切な関係の構築に努めるものとする。

(他の自治体との関係)

第39条 市は、共通する地域課題の解決や効果的で効率的な行政運営のための広域事務処理、大規模災害時の相互応援など、他の自治体と積極的に協力連携するものとする。

第10章 補則

第40条 この条例の施行に関し必要な事項は、別に定める。

附 則

(施行期日)

1 この条例は、平成18年1月1日から施行する。

(名張市市民参加条例の廃止)

2 名張市市民参加条例(平成14年条例第2号)は、廃止する。